ロシアW杯準決勝フランス対ベルギー徹底分析・考察

今回はロシアW杯準決勝フランス対ベルギー戦を分析・考察していこうと思う
先発メンバーと結果
前評判通り順調に勝ち上がったフランスと日本に劇的な勝利を収めた後ブラジルを撃破し波に乗っているベルギーとの一戦
結果はフランスがコーナーキックから得点を奪い1-0で白星を挙げ3大会ぶりの決勝進出を決めた
1-0というスコアだけを見ると地味な試合に思えるが実際はベスト4らしさが溢れ出たサッカーの奥深さが詰まった試合だった
そのあたりを細かく分析していきたいと思う
まずは両チームの先発メンバーから紹介しよう
両チームとも表記上4-3-3の形にしたものの攻守に可変するシステムとなっておりミラーゲームの形になったわけではない
そういった戦術面は後に触れるが先発メンバーで気になった点といえばやはりベルギーの右ウィングバックを務めていたムニエが出場停止で起用できなかった点だろう
彼は日本戦、ブラジル戦共に非常に効果的な動きを見せており監督は頭を悩ませたことが予想される
戦前までの起用法からカラスコを再びスタメンに入れるとも考えられたがマルティネス監督はようやくウィングバックとしてのカラスコに見切りをつけたようでシャドリを右に置き中盤の枚数を増やすという策に出てきた
この策がどういった効果をもたらしたのか
その点も掻い摘んでいきながら試合を掘り下げていこうと思う
ベルギーの作戦とフランスの堅守
ベルギーの大会直前の親善試合はDAZNでも配信されており視聴された方も多くいらっしゃると思うが正直に言ってマルティネス監督が飽和しているタレント陣をコントロールしきれていないように見えた
その状態のまま本戦を迎えグループリーグを1位で突破し日本戦で勝利はしたもののかなりの苦戦を強いられた
そこでマルティネス監督は気づいたのか、はたまた振り切ることができたのか定かではないがブラジル戦で大きく戦術を変更、見事にベスト4へと進出
そのためこの試合でも何かやってくるんじゃないかとキックオフ直後から選手の配置に注視して観戦していたがやはり対フランス用にマイナーチェンジは施されていた
ただベルギーの戦術について記述する前にフランスの戦術を見直しておこう
フランスのゲームプラン及び戦術はある程度固定化されており基本的には堅守速攻という形
しかしそれは普通のチームではマネできない言わばフランス式堅守速攻とも呼べるスタイルだ
それはどういうことか下記の画像をご覧いただきたい
4-4-2のような守備陣形を採用するものの中盤のブロックにムバッペは参加せずカウンターの脅威として前残りする
3枚で中盤を守り切るなんてことはW杯のような舞台では通常無理だがカバー範囲が化け物のように広いカンテ、身体能力に優れたポグバというダブルボランチに加えてバランス感覚に優れたマトゥイディを左サイドに配意
このワールドクラスの3センターで中盤を締めることでこの陣形を成立させているのだ
おまけにグリーズマンの人についていく守備の献身性の高さも重要なポイントだろう
つまりフランス式堅守速攻は選手それぞれの持ち味を最大限発揮させている布陣と言える
・選手の持ち味ガンガン発揮
・前線と中盤が補完関係
・けっこう守備的なスタイル
そんな適材適所が完璧なフランスに対してベルギーのとった策はこうだ
まず簡単に守備の話からさせてもらうが撤退守備の際はヴィツェル、デンベレ、フェライニら中盤の3センターがフランスと同様にある程度ブロックを組みデブライネ、アザールいずれかの選手がボールが自身のサイドに渡った時には戻るというややアバウトな4-4-2だった
なぜこんな徹底されていない守備でセットプレーからの1失点で済んだかというとまずベルギーが押し込まれる時間が少なかったことが1点
もう1点がデブライネ、ルカク、アザールという3トップが強烈すぎるため前残りされた場合フランスの両サイドバックやボランチの選手が攻撃参加しにくくなり厚みのある攻撃ができなかったことが要因として挙げられる
ベルギーの守備は前からのプレスが弱かったり中盤が間延びしていたりと問題が多かったが対フランスではその問題点が浮き彫りになりにくい構図となっていた
話を攻撃面に移すが先述したように出場停止のムニエに変わってデンベレを投入し4バックに変更した
しかし攻撃時には左サイドバックのヴェルトンゲンが後ろに残って疑似的な3バックを生み出していた
これにはカウンター要因として前残りしているムバッペをフリーにさせないという意図もあったのだろう
それから中盤の構成も守備時と大きく変わっておりデンベレとヴィツェルのダブルボランチにフェライニがトップ下気味にポジションをとっていた
これにも論理的な理由があるように思えた
というのもフランスの3センターに対してフェライニをやや前めに置いた3枚をぶつけることで中盤で数的同数を生み出しそこにデブライネアザールらが絞ってボールを受けに来ることでバイタルエリアに多くのパスコースが生まれ危険な位置で前を向きやすくなる構図になっていた
もちろんそこにグリーズマンが下りてきたりフランスの両サイドバックがマークに絞ってきたりと一筋縄ではいかないがビルドアップの面でベルギーが優位性を保っていたのはこういった理由があったと思う
さらに普段はその風貌とプレースタイルからネタキャラ扱いされているフェライニがこのゲームにおいてはミソとなっており彼をバイタルエリアに置くことでボランチに置かれた際のパス精度の低さやポジショニングの悪さなどは出にくくなる上に間でボールを受けるトラップの巧さやクロスに対して飛びいこんでいく空中戦の脅威など長所が存分に発揮されていた
おそらくフランスが守備的なスタイルであることを予想し押し込んだ展開が続く中で空中戦で強さを発揮するフェライニを起用したという戦術的な意図もあったのだろう
その分失点シーンに関与してしまったのが不幸だが戦術理解力の低い彼をここまで上手く使いこなし且つムニエという主力選手を失った中でここまで対フランス用の戦術を仕上げたマルティネス監督は素晴らしい監督だと思う
・ベルギーの3トップ怖すぎてあんまフランス上がれない
・中盤で数的同数作ってパス回し
・フェライニ悪さ消えてた
・マルティネス監督だめだと思ってたら結構凄かった
ただそれだけでは勝てないのがサッカーだ
結局プレーするのは選手であり監督ではない
いかに良い戦術を作り上げたところで選手の調子が悪ければ負ける試合もある
まさにこのゲームはそんなものだった
ベルギーが負けた要因
この試合において最も不調だった選手それはデンベレで間違いないだろう
守備面において献身性・強さを見せたデンベレだが前に出したキーパスはことごとくカットされ数回チャンスを潰していた
それに加えて後半ベルギーはややパワープレー気味にクロス攻勢に入るがそこでも普段素晴らしい精度のクロスを上げるデブライネであったりメルテンスなどのボールが合わない
もちろんフランスの守備の強度も褒めるべきだがそういった少しのズレがこのレベルの対戦では致命的になってくる
そして少ないチャンスの中で1つのセットプレーをドンピシャで決めたフランス
サッカーの面白さ、奥深さが詰まった試合だったのではないだろうか
恐らくもう1試合戦えばまた違う結果になるだろう
しかしこれは1発勝負のトーナメントだ
フランスの戦い方を非難しているベルギーの選手もいるが僕はルールの下で勝利したフランスを称賛したい、おめでとう
まとめ
これでW杯の残り試合は3試合となってしまった
長いようで短かった4年に1度の宴が終わってしまうが残りの試合も今回のゲームのような熱戦になることを期待しよう
そしていつか日本代表がこの舞台で戦うことを祈る
筆者のツイッターはこちら→づんづんのツイッターアカウント
[写真引用元]=Getty Images
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