サッカー日本代表ロシアW杯ポーランド戦徹底分析・選手採点

今回はロシアW杯グループリーグ第3戦、ポーランド戦について分析・考察していこうと思う
先発メンバーと結果
日本は引き分け以上でグループリーグ突破が決まるという状況でスタメンを6人変更
その先発はこちら
酒井高徳を左サイドハーフで起用している点や山口を投入していることから守備に重心を置いて引き分けを狙う監督の狙いが見え隠れした先発メンバー
特に現地のロシアは日本以上に気温が高く体力の消耗が激しいこともあり決勝トーナメントも視野に入れた主力組の温存という意図もあったのだろう
ただこの試合において最も話題を呼んでいるポイントは選手起用ではなく最後の約10分間のプレーだ
日本は0-1というビハインドの展開だったが現状のスコアのままで行けばグループリーグ突破が決まる状況であった為パス回しで時間をつぶし、裏で行われていたコロンビア対セネガルの結果を待つという選択肢を取った
もちろんこれはコロンビア対セネガルのスコアが動けば敗退する可能性もあるかなりのリスクも背負った上での決断だった
しかしコロンビア対セネガルは1-0でコロンビアが勝利し終了、日本は0-1で敗戦したものの西野監督は大博打に勝利し2位でのグループリーグ突破を決めたのだった
もちろんこの采配は「フェアプレーに反している」「最後まで戦ってほしかった」などと大きな批判を呼んでいる
だがあの場面で無理に同点を狙いに行った場合にもカウンターを食らって絶望的な2失点目を喫するリスクもあったのだ
実際この試合はカウンターによるビックチャンスを数回作られていた
攻撃に出るにもリスク、時間をつぶすにもリスクがあるあの状況で西野監督はリアリストとなり裏目に出ればより批判を浴びることが予想される後者を選択、その結果見事日本を次のステージへと導いた
その勇気と決断力は称賛されるべきものだと思う
それでも最後にあれだけの博打に出ざるを得ない試合展開にしてしまったことは批判されて当然だろう
その点に焦点を当てて議論した方が日本サッカーの未来のためになるのではないだろうか
この記事ではそのあたりを詳しく掘り下げていく
統率の取れていない中盤
この試合が始まってまず最初に注視した点はビルドアップ及び守備時の中盤だ
キャプテンとしてチームの円滑油になっていた長谷部を外しポジショニングやパス精度に難のある山口がどんなプレーを見せるのか注目していたが悪い意味で予想通りの結果だった
まずビルドアップ時に関してだが長谷部・柴崎でボランチを形成していた際はこちらの記事でも述べているように代わる代わる最終ラインに参加し疑似的に3バックを作り続けることにより相手のプレスをかわし続けて良い楔のボールを当てていた
しかし柴崎・山口コンビになると山口が中々縦パスを通さないため疑似的な3バックを生み出しても必然的に柴崎への負担が増えてしまいそこを狙われて高い位置でのインターセプトからカウンターという形が散見された
大島僚太ならもう少し楽にゲームを運べたのではないかと思ってしまうが出場しないということはケガの具合が報道されているよりも深刻なのかもしれない
ただ山口も悪い面ばかりだったわけではなく、持ち前の球際の激しさでピンチの芽を摘み取るシーンも見られた
だがそこでも柴崎・山口コンビの相性の悪さが露見してしまう
このゲームにおいては柴崎・山口共にパスコースやスペースを消す守備をするのではなく人・ボールについていく守備を行っていたためチャレンジ&カバーの徹底ができておらずバイタルエリアを大きく開けてしまいそこからチャンスを作られるシーンが多かった印象だ
山口の持ち味は球際での激しさのため彼を起用する上では山口がチャレンジ、柴崎がカバーというパターンがセオリーだとは思うのだがこの試合の柴崎は普段見せてくれるバイタルでの気の利いた守備なども少なく特徴の1つであるインテリジェンスの高さも失っているように思えた
試合後本人も「今日は少し体が重たかった」と発言していることから短い期間での3試合連続スタメン出場によるコンディション不調があったのだろう
決勝トーナメントでは欠かせない存在なだけに入念なコンディション調整を行ってほしいところだ
限定された攻撃パターン
それからこの試合において特に気になった点がもう1つ
かなり限られた攻撃パターンだ
コロンビア戦、セネガル戦においては大迫のポストプレーや左サイドでの乾・長友のコンビネーション、香川のテクニカルなプレーなど多くの攻撃を見せていたがこの試合はかなり限定的なプレーばかりだった
左サイドで宇佐美がボールを持った際には長友との連携からクロスといったオフェンスを見せていたものの右サイドでの連携や岡崎と武藤の2トップによるコンビ―ネーションは皆無だった
それもそのはずで右サイドで先発した酒井高はそもそも本職のプレーヤーではないし岡崎と武藤の2トップも両選手ともに裏抜けもポストプレーもできるという万能型タイプの選手でイマイチ相互関係が取れているようには思えなかった
そのため左サイドに頼らざるを得ず一辺倒な攻撃となってしまった
例えば宇佐美と武藤のポジションを変え宇佐美をトップ下気味に配置するだけでも2トップの役割がより明確化され効果的な攻撃になったと思うのだがそういった戦術変更はなかった
そういった中で後半開始早々に岡崎のアクシデントにより大迫が投入される
これにより2トップの役割がはっきりしたことで迷いがなくなり攻撃にリズムが生まれるかと思ったがそうはいかなかった
理由としては先述した柴崎・山口コンビによるゲームメイクの不備と槙野の縦パス精度の悪さなどで下りてきてポストプレーを行おうとする大迫に中々楔のボールを通せなかったことが上げられる
大迫のポストプレーという攻撃の生命線を失った日本はその後も決定機を生み出すにも至らず
得点を奪えないまま0-1でゲームを終わらすという選択肢を取ったのだった
あの大博打に勝利したから主力組も休めて結果オーライだが試合内容はロシアW杯直前のガーナ戦、スイス戦並みに酷いものでそういった試合展開を招いた酒井高徳の右サイドハーフ起用や岡崎・武藤の 急造の2トップ、柴崎・山口のアンバランスな中盤などは完全なる人選ミスでありその点において西野監督は批判されて然るべきだと思う
ベスト16で戦うベルギーとの一戦ではコロンビア戦、セネガル戦をベースとしたメンバーで臨むと思うが今回のような適材適所でない選手起用は行わないでもらいたい
選手採点・寸評
この試合における僕個人の選手採点と寸評を載せていく
※10点が最高、6が平均
GK
川島永嗣 6.5
コロンビア戦、セネガル戦でのパフォーマンスを挽回するようにビックセーブを連発 失点シーンに関しては責めれないものだった
DF
酒井宏樹 6.5
3戦連続での先発となったがこの試合でも素晴らしいダイナミズムを見せた
吉田麻也 6
終始集中力を保ってプレーしていた CKのビックチャンスを逃したことが悔やまれる
槙野智章 5.5
W杯初先発初出場となったが攻守共に精彩を欠くプレー しかし決定的なスルーパスを止めたシーンは見事
長友佑都 6
攻守において素晴らしい運動量を見せ鋭いクロスボールでチャンスを演出
MF
柴崎岳 6
ビルドアップに精を見せたが攻守において本来のプレーはできず 疲れの影響か
山口蛍 5.5
守備時に光るプレーもあったが振り切られるシーンも多々あり 攻撃面は改善されず
酒井高徳 5.5
慣れないポジションで最低限の仕事はこなした しかしセットプレーで致命的なミス
宇佐美貴史 6
課題だった守備時の献身性も見せたが攻撃において違いを作るには至らず
→乾貴士 6
左サイドから長友とのコンビネーションなどチャンスを作るが決定的な仕事はできず
FW
武藤嘉紀 5.5
守備への献身性は見せたが得点への意識の高さからか視野の狭さが露呈
長谷部誠 -
岡崎慎司 6
持ち前の守備への献身性を発揮 ケガの影響を感じさせないプレー
→大迫勇也 5.5
自慢のポストプレーが影を潜めた
まとめ
まさに大博打に勝利し紙一重でグループリーグを突破した日本代表
ケイスケホンダ以上に「もっている」西野監督なら日本の歴史を変えてくれるかもしれない
史上初となる8強入りなるか
非常に期待がかかる
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[写真引用元]=Getty Images